ビタミンEは、もともと1920~1930年代に不妊のネズミの実験によって発見された脂溶性ビタミンです。その後、人のカラダにも適応されました。1931年にビタミンEによる習慣流産の治療(成功率8割)、1937年には切迫流産と妊娠中毒症への有効性が報告され、現在に応用されています。
ビタミンEには8種類があり、中でもカラダに1番多く存在し生理活性が最も強いのはα-トコフェロールです。「トコフェロール」とは、tocos(子どもを産む)、phero(力を与える)、ol(水酸基をもつ化合物の総称)という意味からきています。
ビタミンEといえば、カラダの中の強力なサビ取り効果である抗酸化作用が注目されるようになり、今では若返りのビタミンなどと呼ばれるようになっています。 今回は、そんなビタミンEについて解説していきます。
ビタミンEとは
酸素が豊富にある状況で、生きている植物や動物の体が急に燃える(酸化する)ことがないのは、生体内に抗酸化物質が含まれているためです。
ビタミンEは細胞膜や脂質に多く存在し、自らを酸化させることで体内の細胞や脂質の酸化を防いで体を守ります。『血液中のLDLコレステロールの酸化を抑制し、動脈硬化を予防する。』これもビタミンEの働きです。
植物も脂肪の酸化を防ぐためにトコフェロールを生成します。ビタミンEは、動物の体内でも同様の働きをし、脂質やビタミンAを保護しています。つまり、ビタミンEは体内の重要な脂溶性抗酸化物質なのです。常に細胞のターンオーバーや成長過程にある動物にとって、内分泌、筋肉、末梢血管系の適切な成長や機能に不可欠な存在です。
このような働きで、生活習慣病や老化と関連する疾患を予防することが期待されていることから「老化抑制ビタミン」、「若返りのビタミン」とも呼ばれています。
ビタミンEとキロミクロン
ビタミンEは食べた後、リポたんぱく質というタンパク質のボール(キロミクロン)に吸収されて運ばれていきます。このとき、カラダがたんぱく質不足だと、このボールがつくれずにせっかく摂ったビタミンEが無駄になってしまうおそれが出ます。
ビタミンEはあぶらに溶けるので、一緒に食べる脂質の量によって吸収率がちがってきます。ビタミンEを摂る際には、脂質やたんぱく質も一緒にしっかり摂りましょう。
ビタミンEの種類
ビタミンEは8種類あり、トコフェロールとトコトリエノールの2つに大別されます。
α-トコフェロール | α-トコトリエノール |
β-トコフェロール | β-トコトリエノール |
γ-トコフェロール | γ-トコトリエノール |
δ-トコフェロール | δ-トコトリエノール |
トコフェロール
抗不妊因子として見つかったのは、α-トコフェロールのみです。妊娠に関連する観点から見るとβ、γ、δ-トコフェロールの3つは働きが非常に低くなります。
最も注目されている抗酸化作用は、δがいちばん強く、δ> γ> β>αの順となっています。
トコフェロールとトコトリエノールの違い
炭素同士の結合が二重になっているかどうかがトコフェロールとトリトコフェロールの差です。
炭素同士の結合が二重になっているトコトリエノールのほうが柔軟性があるため細胞膜への侵入が良く、すばやく作用が発揮されます。
- トコフェロール:持続性のある作用
- トコトリエノール:即効性のある作用
ビタミンEのはたらき
ビタミンEの種類別のはたらき
- α-トコフェロール:抗酸化作用、抗炎症作用、酸化ストレス抑制作用、抗不妊因子など
- γ-トコフェロール:ナトリウム利尿作用
- δ-トコフェロール:抗酸化作用、ナトリウム利尿作用、抗アレルギー作用、抗腫瘍作用、抗動脈硬化作用など
抗酸化作用とは
抗酸化作用とは、活性酸素による「酸化」から体を守る作用のことです。活性酸素の過剰産生や酸化ストレスは老化を促進させたり、健康にも悪影響を及ぼすといわれています。具体的な働きとしては下記の通りです。
- 過酸化脂質の生成を抑制し、血管を健康に保つ作用
- 血中LDLコレステロールの酸化抑制作用
- 細胞の酸化を防ぐ老化予防作用
生活習慣病の予防・改善効果もあります。血液中のLDLコレステロールが活性酸素の影響で酸化して「過酸化脂質」になり、蓄積すると、動脈硬化を進行させてしまいます。
動脈硬化は心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、高血圧などを引き起こす原因となるため、注意が必要です。ビタミンEの強い抗酸化作用は、コレステロールや脂肪の酸化抑制に役立ちます。
血流を良くするはたらき
ビタミンEには、血管収縮を促す神経伝達物質の生成を抑制し、血行を促進する作用もあります。
血流がスムーズになり、体の隅々に酸素や栄養素が行き渡るようになるため、血行不良が原因となった肩こりや緊張性の頭痛、疲れ、冷えの緩和が期待できます。
ホルモンバランスを整えるはたらき
ビタミンEは脳下垂体や副腎といったホルモンを産生する器官に多く分布しており、女性ホルモンの一つであるプロゲステロン(黄体ホルモン)の材料にもなる栄養素です。
女性は更年期を迎えると、女性ホルモンの分泌量が激減してさまざまな更年期症状が現れます。プロゲステロンの材料となるビタミンEを摂取することは、更年期対策としても効果が期待できるでしょう。
不足した場合、生理障害・更年期障害生殖機能の衰え自律神経失調症などの症状の引き金になる可能性があります。
細胞膜を守るはたらき
ビタミンEは脂質に溶けるので、細胞膜の脂質(不飽和脂肪酸)の部分に入り込んで細胞膜を守ると考えられています。人のカラダの中には60兆個の細胞がありますから、それ全部を守ろうとすると、多くのビタミンEが必要になってきます。
私たちのからだは60兆個の細胞からできています。また、人のからだは60%が水分です。その水の中で一つひとつが細胞としての形と働きを保つために、2層の脂質とたんぱく質でできた細胞膜で仕切られています。よく解剖学や生理学では『細胞膜は、リン脂質の二重層とたんぱく質粒子がぷかぷかと浮かぶ流動モザイクモデルです。』などと表現されます。
細胞膜の構造は、水に溶けやすい頭の部分が外側(親水性)にあり、水に溶けにくい脂質の部分(疎水性)が真ん中にはさまっている二重層のかたちになっています。
【参考引用】オーソモレキュラー 栄養医学研究所
ビタミンEの1日の推奨摂取量
ビタミンEの1日の食事摂取基準は「α-トコフェロールの目安量」で示されます。
厚生労働省が公表する「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビタミンEの1日の推奨摂取量は以下のようになっています。
【男性のビタミンEの1日当たりの摂取量の目安】
- 18〜29歳……6.0mg
- 30~49歳……6.0mg
- 50~64歳……7.0mg
- 65~74歳……7.0mg
- 75歳以上……6.5mg
【女性のビタミンEの1日当たりの摂取量の目安(mg/日)】
- 18〜29歳……5.0mg
- 30~49歳……5.5mg
- 50~64歳……6.0mg
- 65~74歳……6.5mg
- 75歳以上……6.5mg
ビタミンEの摂取状況は、厚生労働省が公表する「令和元年 国民健康・栄養調査報告」によれば、男女ともどの年代でもほぼ最低限、必要量を摂取できているようです。
【参考引用】「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
【参考引用】「令和元年 国民健康・栄養調査報告」
ビタミンEが豊富な食べ物
ビタミンEは、アーモンドや落花生などの種実類、ひまわり油やオリーブオイルなどの油脂類などに豊富に含まれています。また、魚介類、豆類、野菜類、穀類などにも豊富です。
ここからは、広く流通している食材からビタミンE(種類別)が豊富な食べ物をトップ10のランキング形式でご紹介します。
なお、女性のビタミンEの1日当たりの摂取量の目安(mg/日)は、50~64歳で6.0mg、65歳以上で6.5mgです。
αートコフェロール: 含有量Top 10
順位 | 食品名 | 成分量 100gあたりmg |
1 | せん茶/茶 | 65.0 |
2 | ひまわり油/ハイリノール | 39.0 |
2 | ひまわり油/ミッドオレイック | 39.0 |
2 | ひまわり油/ハイオレイック | 39.0 |
5 | とうがらし/乾 | 30.0 |
5 | アーモンド/乾 | 30.0 |
7 | アーモンド/いり | 29.0 |
8 | 綿実油/植物油脂類 | 28.0 |
8 | こむぎ/小麦はいが | 28.0 |
8 | 抹茶/茶 | 28.0 |
8 | ぶどう油/植物性油脂 | 28.0 |
β-トコフェロール : 含有量Top 10
順位 | 食品名 | 成分量 100gあたりmg |
1 | かや/いり | 68.0 |
2 | こむぎ/小麦はいが | 11.0 |
3 | せん茶/茶 | 6.2 |
4 | アマランサス/玄穀 | 2.3 |
5 | 大豆油/植物油脂類 | 2.0 |
6 | だいず/黒大豆/国産/乾 | 1.7 |
7 | 米ぬか油/植物性油 | 1.5 |
8 | だいず/ぶどう豆 | 1.4 |
8 | ひまわり/フライ/味付け | 1.4 |
8 | きな粉/青大豆/脱皮大豆 | 1.4 |
γ-トコフェロール : 含有量Top 10
順位 | 食品名 | 成分量 100gあたりmg |
1 | 大豆油/植物性油 | 81.0 |
2 | とうもろこし油/植物性油脂 | 70.0 |
3 | えごま油/植物性油脂 | 59.0 |
4 | 調合油/植物性油脂 | 56.0 |
5 | ラー油 | 48.0 |
6 | ごま油 | 44.0 |
7 | マヨネーズ/卵黄型 | 41.0 |
8 | あまに油 | 39.0 |
9 | マーガリン/無塩 | 37.0 |
9 | マーガリン/有塩 | 37.0 |
δートコフェロール : 含有量Top 10
順位 | 食品名 | 成分量 100gあたりmg |
1 | 大豆油 | 21.0 |
2 | 植物油脂類/調合油 | 11.0 |
2 | だいず//いり大豆/黒大豆 | 11.0 |
2 | あずき/全粒/乾 | 11.0 |
2 | 凍り豆腐/乾 | 11.0 |
2 | だいず/いり大豆/青大豆 | 11.0 |
7 | マヨネーズ/卵黄型 | 10.0 |
7 | だいず/黒大豆/国産/乾 | 10.0 |
9 | だいず/いり大豆/黄大豆 | 9.8 |
10 | ささげ/全粒/乾 | 9.7 |
魚介類
ランキングには属しませんでしたが、ビタミンE(αートコフェロール)は、魚介類にも豊富に含まれています。
【ビタミンEが豊富な魚介類(可食部100g当たりの含有量/mg)】
- あゆ(養殖・内臓・焼き)……24.0mg
- あんこう(肝・生)……14.0mg
- しろさけ(すじこ)……11.0mg
- ぼら(からすみ)……9.7mg
- 牡蠣(製油漬缶詰)……9.5mg
- キャビア(塩蔵品)……9.3mg
- しろさけ(イクラ)……9.1mg
- まぐろ類油漬缶詰(フレーク・ホワイト)……8.3mg
- いわし類油漬缶詰(フレーク・ホワイト)……8.2mg
- たらこ(焼き)……8.1mg
ビタミンEとビタミンC・ビタミンAの相乗効果
ビタミンEは、以下のポイントを押さえることで効率よく摂取できます。
ビタミンEは他の抗酸化物質と一緒に摂取すると、更に効果的です。同じく抗酸化作用のある物質として知られるビタミンCは、ビタミンEの抗酸化作用を高める作用があります。体内の脂質の部分を活性酸素から守ってくれています。このときビタミンCが一緒にあると、様々なはたらきで疲弊してしまったビタミンEをもう一度甦らせてくれるのです。
- ビタミンC、ビタミンAと合わせて摂取する
- オイルを使って調理する
- 牛乳・クリームなど乳脂質と組み合わせる
- 食物繊維も摂取する
また、ビタミンAはビタミンEとビタミンCの働きを長持ちさせるため、組み合わせて摂取すると相乗効果が期待できます。
ビタミンEの過剰摂取の影響
ビタミンEは脂溶性ビタミンの中では体内に蓄積されにくく、通常の食事では過剰症がみられることはまずないとされています。
しかし、サプリメントなどで極端にビタミンEを過剰摂取すると、血が止まりにくくなることがあります。
近年、ビタミンEを含む薬剤やサプリメントの過剰摂取は、骨粗鬆症のリスクを高める可能性があるという研究結果が出ています。過剰摂取には注意しましょう。
【参考】日本薬学会 環境・衛生トピック
ビタミンEの臨床応用への期待
ビタミンEは、以下の臨床応用も期待されています。
- 血栓形成予防
- LDL酸化防止
- 免疫力増強
- 鉄欠乏貧血への応用
- 糖尿病合併症の予防
- アトピー性皮膚炎(ビタミンCやビタミンAとともに)
- 尋常性乾癬(ビタミンAとともに)
まとめ
ビタミンEは、細胞膜や脂質に多く存在し、自らを酸化させることで体内の細胞や脂質の酸化を防いで体を守ります。生活習慣病の改善・予防にも役立つなど、しっかり摂取したい栄養素です。ビタミンEは現代の通常の食事であれば不足しにくく、過剰摂取も起こりにくいといわれています。栄養バランスのいい食事を心がけ、体の中から若返りを目指しましょう。
ビタミンEはこれらの働きで、私たちのカラダを作ったり、リスクから守ったりしているわけです。『カラダは食べたものでできている』ので、慢性的な肩こりや冷え、生理痛など不調を感じやすい方は、これらの栄養素が関連しているかもしれません。
ビタミンを摂りすぎると過剰症が起こる可能性もあり、サプリメントの使用には注意が必要です。バランスの良い食事を心がけながら、効率よくビタミンEを摂取することが大切です。
それでも前述で述べたような、気になる不調や症状が改善しない場合は、早めに医療機関で医師の診察を受けるようにしてください。
【参考引用】オーソモレキュラー 栄養医学研究所
【参考引用】「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
【参考引用】食品成分データベース
【参考引用】NHK出版 健やかな毎日のための栄養大全
【参考引用】「令和元年 国民健康・栄養調査報告」