血液の酸素がヘモグロビンと結合している濃度の数値を酸素飽和濃度【SpO2】といいます。今回は、酸素飽和濃度【SpO2】についてご紹介いたします。時には、命を繋ぐ為の大切な指標となります。
SpO2(エスピーオーツー)とSaO2(エスエーオーツー)について
空気中の酸素は呼吸によ小さな風船が集まった構造の肺胞に運ばれます。酸素はヘモグロビンと 結合し、全身のあらゆる組織に運ばれます。ヘモグロビン(HGB)は鉄(ヘム)とたんぱく質(グロビン)が結びついたもので、血液が赤い色をしているのはヘムが赤色素を持っているためです。血色素量は血液中のヘモグロビン量を表します。
ヘモグロビン(HGB)は鉄を含みます。これに酸素が結合すると鮮紅色となります。正常では、ヘモグロビンの約96〜99%に酸素が結合し、その比率を動脈血酸素飽和度【SaO2】と呼びます。
パルスオキシメーター「経皮的動脈血酸素飽和度測定器」で皮膚を通して光の吸収値で測定したのが酸素飽和濃度【SpO2】で、SaO2 とほぼ同じ値を示します。カラダに異常がなければ、SpO2が96%〜99%などと表示されます。
パルスオキシメーター「経皮的動脈血酸素飽和度測定器」の仕組み
血液が赤いのは、赤血球に含まれている「 ヘモグロビン HGB 」という色素のためです。このヘモグロビンは酸素と結合する特徴を持っています。
呼吸の際に、肺で取り込んだ酸素は肺に流れこんでくる血液の中のヘモグロビンと結合して心臓に戻ります。その後、動脈を通して全身へと運ばれます。ヘモグロビンは、酸素と結合すると赤くなり、酸素から離れると黒くなるという性質を持っているそうです。
肺で酸素をため込み心臓から飛び出したばかりの新鮮な血液(動脈血)は色が鮮紅色としていますが、全身に酸素を配り終えた後の血液(静脈血)は黒めの色となります。一般的に血液検査で採血されると、ご自身の血液が黒いと思われる人が多いそうです。これはすでに全身に血液をめぐり酸素をあらゆる組織に配り終えた後の静脈血を採取しているからです。
そして、パルスオキシメータは、動脈血の赤みを測定するため、肺から酸素をしっかり取り込めているかを測ることができるという仕組みになっています。パルスオキシメータで測る数値を、動脈血酸素飽和度(SpO2)と呼びます。これは血中のヘモグロビンのうち、何%のヘモグロビンが酸素と結合しているかを示しています。
酸素飽和濃度(SpO2)の正常値について
パルスオキシメーターなどの酸素飽和濃度の正常値は、日本呼吸器学会によれば、96~99%が正常値とされています。どんなに良くても100%になることはほとんどありません。過呼吸になって呼吸数が早い人くらいにしか起こりません。
そして、基準値を少しでも外れたら即座に異常というわけではありません。少し歩いた後に測定すれば酸素飽和濃度は93~95%くらいになることもありますし、96%を瞬間的に下回ったからといって即座に異常という判断にはなりません。マスクを装着してしばらくの間話し続けていると、93%くらいまで低下することもあります。
コロナウイルス感染者の重症度の程度を示す基準にも酸素飽和濃度【SpO2】が用いられます。中等症Ⅰの基準は「酸素飽和濃度(SpO2)96%未満」とされています。実際の医療現場では、肺炎があるかどうか、呼吸困難が強いかどうか、といった実際に起こっている症状が重要のようです。
但し、いかなる場合でも容認できない数値のラインが酸素飽和濃度90%です。このラインを切ってくると「呼吸不全」と呼びます。これは間違いなく異常の数値で、一般的には直ちに救急搬送(119番)必要です。この状態に至るまで何かしかしらの苦しい状態や症状が現れている事が考えられます。
医療現場としては、90%を切った段階で対策しては遅いという見解が多いです。安静時に呼吸困難などの状態と酸素飽和濃度(SpO2)96%未満などの所見がある場合は、救急搬送(119番)の準備をしましょう。コロナウイルス感染者の場合は、酸素飽和濃度(SpO2)93%未満の時点で中等症Ⅱとして対応する基準があります。
酸素飽和濃度【SpO2】と酸素理解曲線
血液中の全体に含まれている酸素を酸素分圧と呼びます。酸素飽和度(SpO2)の関係は下記のグラフのようになり、これを酸素解離曲線と呼びます。
例えば、若い方の平均値でみていくと血液中の酸素分圧は95mmHg程度で、これはグラフでみた酸素飽和度【SpO2】でいうと98%に相当します。高齢者の平均値では酸素分圧80mmHg程度で、これはグラフでみた酸素飽和度【SpO2】でいうと95%に相当します。機械の誤差を含めても、前述の通りおおよそ【SpO2】96%~99%であれば大きな問題はありません。(100%だと前述の通りに過呼吸など、呼吸が多すぎることを疑います。)
医療現場では肺や心臓に慢性的な病気や疾患がない方の場合、SpO2が93%程度になると焦り始めます。90%を切ると緊迫した状態となります。これは酸素分圧60mmHgに相当し、これを下回ると呼吸不全とされます。グラフでみると、酸素分圧60mmHgを下回ると急激にSpO2が90%より低下していきます。各臓器が十分な酸素を受け取れなくなってくるため様々な障害が生じてしまう危険な状態となっていきます。
酸素分圧60mmHg、酸素飽和濃度【SpO2】 90%を下回る場合には、酸素療法や、場合によっては人工呼吸器療法によって酸素分圧を上げる必要がでてきます。
【自身の経験談】病院勤務時代の経験
私自身、病院やクリニックでの勤務経験がございますが、日常的に緊迫した場面を経験しました。その中でも、1番記憶に鮮明に残っている事があります。クリニックに入社した翌日に、その日は看護助手、クラーク業務の研修中でした。
肺炎を発症し【SpO2】90%〜93%で苦しんでいる方が緊急搬送されてきました。呼吸不全の可能性があり、現場には緊張した空気が張り詰めていました。【SpO2】90%を下回ると急激に容体が悪化していく可能性があるからです。
受付事務、看護師、リハビリスタッフ、と手の空いているスタッフは総出で人工呼吸器の準備や【SpO2】の測定、採血から点滴や時系列に基づいたカルテの記載など分担し医師のサポート体制に入ります。
なんとかその方の容体は、無事に落ち着きました。私は、何もできず終始アタフタしているだけでした。医療現場に立つ一人として、何もできなかった事に対してとても悔しい経験をしたことを今でも鮮明に覚えています。
まとめ
今回は、酸素飽和濃度【SpO2】についてご紹介いたしました。通常では、酸素飽和濃度【SpO2】96%〜99%の表示になる事が多いです。肺や呼吸器などに慢性的な病気や疾患がない方の場合、酸素飽和濃度【SpO2】が93%程度になると焦り始めます。患者様自身も何かしら苦しい状態であると思われます。90%を切ると緊迫した状態となります。この状態では既に、医療機関などに搬送されていなくてはなりません。
自身の現場経験をもとに、ちょっとした医療の知識をお伝えして行きたいと思います。何かが起きた時、誰かののお役に立てる内容になれば幸いです。